税理士事務所のABC feat.岡本吏郎

最近、低価格の税理士のネット広告をよく見かけませんでしょうか?
「顧問料月額10,000円から! 今なら○○も無料で」
毎月の顧問料が1万円を下回ると集客を仕掛けている税理士事務所が
増えています。
お客様も年間数百社ペースで増えているそうですよ!
また、低価格だからといって品質が低いかというと、そうでもなさそうです。
お客様からすると、悪くないですよね。
とはいえ、低価格の顧問料で契約できるのは、概ね年商5,000万円以下の
零細企業が中心です(色々な税理士がお互いを牽制し合っているのがよく
分かります)。
年商1億を超えてくるような企業ではそう簡単に低くはなりませんが(契約形態
によっては下がります)、低価格の広告につられて問合せをするケースも多い
でしょう。
現在のような経済状況の中、顧問料は低い方が良いというニーズは当然の
流れですが、サービスの供給者である税理士の経営が成り立たなければ
意味がありません。
一社当たりのお客様から頂く報酬が低いわけですから、経営的にきつくなる
のではないかという想定がされます。
では、なぜ、自身の経営を悪化させかねない低価格路線が拡大しているの
でしょうか?
今回は、11月2日の当メールマガジンにて岡本が書いた『ABC会計』を受けて、
ご説明したいと思います。
ABCとは、『Activity Based Costing』(活動基準原価計算)の略で、
その名の通り“活動”に主眼を置き、活動を加味した収益性を分析計算する
ものです。
岡本のメルマガにも書かれていたように、高い単価・高い限界利益率の商品
又はサービスであったとしても、ここに掛かる他の費用(例えば人件費)が
高ければ、最終的に残る利益は多くはありません。
一方、低い単価・低い限界利益率の商品又はサービスであったとしても、ここに
掛かる他の費用が低くければ、意外と利益が残るわけです。
そして、大量生産に向いているのは、明らかに後者の
“低い単価・低い限界利益率”。
ここで一つの結論。
低価格のお客様は、税理士にとって“割りの良い”お客様となる可能性が
高いのです。
もちろん、低価格のお客様には低いコストを投入しなければならないわけ
ですから、大量生産の仕組み化が出来ていなければなりません。
この低価格路線を拡大する税理士が用いている大量生産の仕組み・・・。
この効率の良い仕組みを担っている外注先(当然、ほぼ外注です!)は
かなり限定されています。
結局、どの税理士も裏でやっていることは一緒(笑)
低価格で契約し、さらに低価格で外注し、決算や申告を担当するのはパートや
新人職員。
そして、最大のポイントは、低価格路線で契約する規模のお客様であれば、
税理士側としてもリスクが小さいという事です。
なぜなら、企業規模が小さいので、大きな問題が起こる可能性が極めて少ない
のです。
正直なところ、黒字の企業も少なく、税金の計算すら必要がないところが多い。
赤字が多いから、税務調査に来ても低リスク、そもそも税務調査に来る確率も低い。
ここでもう一つ目の結論。
低価格のお客様は、大量生産ラインに乗るための低コスト・低リスクの要件に
合致します。
ここまでくれば、あとはお客様の数を増やせるだけ増やすだけ。
そのためにPPC広告を突っ込むだけ突っ込みます。
高い広告代に付いて来れる税理士だけが契約数を増やすことが出来る・・・。
この低価格モデルはお客様に解約されても単価が小さいので、経営的なリスクも
少ないのです。
集客さえ出来ていれば、すぐに新しいお客様が増えるのですから。
また、新規開業したばかりでお金がない法人を狙いうちも出来ます。
うーん、低価格ながら中々の高収益モデルですね。
あるセミナーに出たら、実際に低価格路線を売りにしている税理士が、
「儲かって仕方がない」と笑っていました。
もともと税理士業務は“高い単価・高い限界利益率”の代表格モデルでしたが、
コスト構造も高いため、近年の報酬下落と共に、旧来型の経営が破綻して
きています。
そのため税理士事務所経営も二極化してきており、“さらに”高い単価・高い
限界利益率の高付加価値サービスを提供するか、低価格路線に対応するかに
分かれてきました。
この両方に対応できない税理士は淘汰され始めています。
結局は、低価格路線を推進する税理士の傘下に入るしかないのでしょうか・・・。
とはいえ、“お山の大将は儲かっても、子分は儲からない”というのが物事の
道理ですので、更に状況を悪化させかねません。
今後の税理士業界がどうなるか見物ですね!
高単価と低単価の収益モデルを両立させるのがベストなので、
エー・アンド・パートナーズ税理士法人もABC会計的に低価格モデルを
検討でもしてみますか(笑)